在宅介護に方向転換
治療の必要性が乏しい高齢者らが自宅に戻らずに長期入院する「社会的入院」の解消が進まない。厚生労働省はこうした利用が多い病院の「介護療養病床」を、廃止期限の2017年度末以降も存続させる方向に軌道修正した。医療・介護を効率化するためにメスを入れようとしたが、高齢者を在宅でケアしきれない現実の前に後退を余儀なくされた格好だ。(武田敏英)
「介護療養病床は高齢者のみとりを担っている。これらの機能を今後も確保することが必要だ」。厚労省は8月7日の社会保障審議会の分科会で、遠回しな表現ながら、介護療養病床をすべてなくすのは難しいという見解を示した。
厚労省が06年に示した方針では、介護療養病床を11年度末までの6年間で廃止する予定だった。日本の平均入院日数は30日を超え、欧米に比べて3倍以上。1年以上の利用も目立つ社会的入院を解消できれば欧米並みに入院が減り、医療と介護の給付費を12年度時点で年3千億円抑える効果を見込んだ。
ところが計画通りには進まなかった。11年に廃止期限は17年度末まで6年延長されたが、それでも介護療養病床はまだ7万1千床余りが残る。田村憲久厚労相は通常国会答弁で「(介護療養病床は)18年度以降もなんらかの形としては残る」と事実上白旗を掲げた。
なぜ青写真通りに進まないのか。最大の問題は高齢者の受け皿となるはずの「自宅」の受け入れ態勢が不十分なことだ。
厚労省は「施設から在宅へ」の方針のもとに在宅介護サービスを拡充し、12年度から24時間体制の訪問介護を導入した。だが今年6月時点の事業所数は全国で500弱。利用者は8千人強しかいない。連合がまとめた調査では、夜間や緊急時の不安から、在宅で介護する家族の3割が「続けていけない」と答えた。
寝たきりの高齢者は自宅に戻っても、たんの吸引やチューブによる栄養補給、点滴などの処置が必要な場合も多い。しかし、子どもの世帯は共働きが増え、親を日常的に見守るのは難しい。
高齢者の最期をどうみとるかも課題だ。老人保健施設や特養ホームは医師が24時間常駐しているわけではないので病院のような対応ができない。これらの施設の終末期ケア件数は介護療養病床の3分の1にとどまる。
社会的入院を巡っては「急性期病床にも根深い問題がある」(日米で医療経営コンサルティングを手掛けるアキよしかわ氏)との指摘がある。
看護師の配置が手厚い急性期病床の診療報酬を06年に引き上げた結果、対象となる病床は約4万床から約36万床に急増した。本来は重点的な治療が必要な重症患者向けの病床だが、実際は利用者の5%前後は入院が90日を超え、社会的入院の疑いがあるとされる。
厚労省は今後はこうした急性期病床の削減を進める方針だ。そうなれば利用者の受け皿となる形で、療養病床はむしろ増えるとの見方もある。
75歳以上の人口は現在約1560万人。25年には600万人程度増える見込みだ。ほとんど治療は要らないのに病院で暮らす高齢者は今後さらに増えてもおかしくない環境になっている。
日本経済新聞より
私も同じ境遇にいるのでよくわかる。
在宅介護は、基本的に難しいのが現実なのだ。
要介護の家族がいて、その要介護状態にて可能なのか不可能なのかが
大きく別れる。
つぎに、家族の状況もそれぞれなのだから、
核家族化が普通の家族形態であれば介護事態が難しいというのは
考えることもないようなことなのであるが、
現実にそういう環境下におかれなければ実態を見ようとしないのが、
今の行政なのだろうか。
それでも、現実的ではないということが分かったための
方向転換であると思う。
結果的には問題は先送りされるわけであるが、
この問題を解決する策は、かなり難しいと言わざるをえない。
人類が単純労働から開放される日を待つしかないのであろう。
それを実現させてくれるのが、ロボットであり、人工知能ということなのだろうと思う。
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