雇用のゆくえ
若者の就職難の裏側には正社員ら既得権を持つ年長者がいる。若い層にだけ重荷を負わせる仕組みは持続しない。痛みを分け合う工夫が要る。
派遣社員として3年間勤めた食品会社から5月に契約を打ち切られた安永美佐子(仮名、26)。派遣先の上司が送別会でささやいた言葉が忘れられない。「正社員は切れないんだ。申し訳ない」
厳格な解雇規制
社員食堂が使えず、自分だけロッカーもなかったが、正社員以上に働いた。「頑張っても真っ先に切られることがよく分かった」とつぶやく。
学校を出た15~34歳の2割が契約社員など非正規で働き、なかなか抜け出せない。60歳まで雇用が保障され、年功賃金の恩恵を受ける大企業正社員との格差は大きい。
OECDが今年4月に出した提言
正社員の長期雇用は、日本企業の競争力の源泉だった。時間をかけて育てた人材は組織への忠誠を強め、「カイゼン」など生産効率上昇を担う。だが企業が新規採用を続ける余裕を失い、負の側面が目立ち始めている。
「若者の雇用のため、もっとできることがある」。経済協力開発機構(OECD)は日本の正社員と非正規の格差を問題視し、何度も改革を促してきた。4月の提言では正社員の雇用保護を緩めるよう求めた。
OECDによると、日本の正社員の解雇規制は加盟する34カ国で最も厳しい。民法上は「解雇の自由」があるが、過去の判例が企業をしばる。会社存続の危機でなければ不当解雇になる。
解雇の前に新規採用を抑え、非正規労働者を削減するよう義務付けてもいる。業績が悪化すると、中高年正社員を守るために、若年層を犠牲にする構図が浮かび上がる。
「会社が働かない中高年を何とかして、後輩を採ってくれたら僕も辞めなかったかもしれない」。2月にNECから外資系に転職した川島直人(仮名、30)は振り返る。
ここ数年は業績悪化で「目標を超える成果をあげてもボーナスが下がった」。一方でパソコンで時間をつぶす50歳代は安泰に見え、「会社の先行きが不安になった」。
若者の苦境が行き着く先。それは25歳未満の失業率が50%を超えるスペインかもしれない。
マドリード市在住で医師資格を持つマルチン・モレノ(27)は国内での職探しを断念し、英国に渡ることを決めた。高学歴・高技能の若者が職を求めて流出し、経済の活力は低下している。
原因の一端は解雇規制にあった。「人員整理のコストが膨大で、企業は採用に消極的」(スペイン経団連幹部)。今年、改革に踏み切るまで、解雇する社員への補償金は欧州連合(EU)平均より3~4割高かった。
北欧に処方箋
事態への処方箋も欧州に見ることができる。デンマークの解雇規制はOECD加盟国で最も緩いが、失業率は14%とEU平均(22.5%)より低い。情報技術や外国語など数千種類の職業訓練で技能を高め、速やかな再就職につなげる。
柔軟な労働市場と手厚い失業対策を組み合わせた「フレキシキュリティ」と呼ぶ政策で、衰退産業から成長産業へ人材を移す。「転職や失業を恐れる若者は少ない」(デンマーク労働総同盟)
日本が正社員への過保護を続ければ、若者のチャンスはさらに減り、中高年は衰退産業にたまっていく。人材の目詰まりを防ぎ、スペイン化を避けるために、正社員の既得権をどこまで守るべきか検証し直す時期にきている。
=敬称略
(若者の雇用取材班)日本経済新聞より
今朝の新聞一面の記事だ。
正規雇用というなんともいえない表現が、
この現実を物語っているように感じる。
働く人に正規も、非正規もない。
社員だろうが、パート社員だろうが、仕事は同じなのだ。
だが、その保護された格差と言うものは大きい。
会社から見れば、社員とパート社員の差は、働く時間の長さくらいしかない。
社会保険に入るか入らないかの差だ。
以前は大きく差が出た社会保険と国民健康保険であるが、
今となっては、差はない。
年金が変わるのであるが、
将来は一元化といわれているのであるから、
それも変わりないということになろう。
そうなってしまっては、正規雇用も、非正規雇用もあまり違いはない。
会社からすれば、能力を高めて、少しでも貢献してくれる人に働いてもらいたい。
働くと言うことをもっと国が考えて、実体とあわせるようにしなければならない。
すでに国際競争の激しいこの時代において競争の舞台にも上がれないという環境が
出来上がっているのだ。
いまの日本政府に期待するほうがおかしいのだろうか。
そうだな。
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